「世界が魔女の森になるまで ー 第30回萩原朔太郎賞受賞者 川口晴美展」

前橋文学館で開催中の「世界が魔女の森になるまで ー 第30回萩原朔太郎賞受賞者 川口晴美展」に行ってきました。私が川口さんの詩を好きになったのは最近なのですが、そのタイミングで展覧会が開かれることを知ったので、これは絶対に行かねば!と気合を入れて待ってました。せっかくなので作品朗読会のイベントのある日に行くことにしました。

 

 

前橋という街に行くことも初めてでした。駅から出たら大きなけやきの並ぶ大通りをまっすぐ進み、川にぶつかったら今度は川沿いに左に向かって歩いて行くと前橋文学館があります。川沿いには大きな柳の木が並んでます。今はまだ工事中のところもありましたが、川沿いの歩道が広くなるそうで、とても良い散歩道だなぁと写真撮りながら歩いていたらすぐに文学館に着きました。

前橋文学館までの川沿いの道

前橋文学館までの川沿いの道

 

詩の展示に行くのは初めてだったのですが、真っ暗な壁や床に光で詩の言葉が映し出されるものや、立っている場所から詩までの距離に変化をつけた展示などがあって面白かったです。また、真っ暗な小部屋の中、テーブルと椅子と蝋燭型の小さなランプとテーブルの上に立てかけられたタブレットだけがあって、その暗くて狭い空間の中でタブレットで川口さんの詩を読むという体験ができる場所がありました。詩集って紙で読むことが多いのであまり暗い場所で読んだことがないですけど、タブレットなら真っ暗な中で詩を読むことができるんだな、集中できていいなって思いました。川口さんの詩は暗い小部屋で読むのが似合う気がします。

円柱からの光で詩の言葉が黒い床や壁に映される

円柱からの光で詩の言葉が黒い床や壁に映される

 

チケットと一緒に渡されるコインでガチャガチャができるようになっていて、詩の言葉が印刷されたキーホルダーがもらえます。グッズまでもらえるなんて実質入場無料みたいなものです!

ガチャガチャのキーホルダー

ガチャガチャのキーホルダー

作品朗読会は、川口さんご本人だけが読まれるのかな、と思ってたのですが、館長の萩原朔美さんと大学生の劇団員さん4名も朗読に参加され、さらにピアノの生伴奏まであってすごく豪華に感じました。実際に聞いてみて、女性の詩が男性の声で読まれる、というのも意外性があって面白いものだなぁと思いました。劇団員さんたちは、皆さんまだ20歳くらいとのことだったのですが、声がよく通って聞き取りやすくてお話も上手で、素晴らしいな〜😭と心から拍手をさせてもらいました。とくに最後の「世界が魔女の森になるまで」は、出演者六人全員による、まるで畳み掛けるような朗読が「多様な声」そのもののようで、とても素晴らしい体験をさせてもらった気持ちです。

また川口さんによる作品解説のお話のなかで、わかったつもりになってはいけないけれど「自分だったかもしれない」と想像することの大切さ、というお話をされてて、私が川口さんの作品が好きなのは本当にそこなんだよなぁと心の中で何度も頷きました。
殺された小学生の女の子について書かれたという「サイゴノ空」を帰宅して再読しました。自分は「たまたま生き残ったのだ」という言葉に共感します。

 

また、劇団員さんたちとのフリートークも面白かったです!劇団員さんたちは群馬や栃木が地元で今もご実家に住まわれているそうで、二時間かけて東京の大学まで通ってる方もいて、たった一度来ただけなのに、前橋思ってたより遠かったわ〜小旅行じゃん…なんて思ってた自分が恥ずかしかったです…
また海辺の街で生まれ育った川口さんと、海のない土地で生まれ育った劇団員さんたちの、海に対する印象の違いのお話も面白かったです。

私も海辺の街で育ち、それこそ高校の裏は浜、みたいな場所だったのですが、わざわざ浜に出て海を眺めながら語り合うなんて青春の一場面もなく、冬の潮風が嫌で窓の隙間に折り畳んだプリントを詰めたりしたこととか、夏になれば校舎内の溝にカニがいたことくらいしか思い出せません😂

海は日常。でもだからこそ、海を見たら帰ってきた、という感じがするのかも。

前橋の人はあの強い風に吹かれたら、帰ってきた、と思うんでしょうか。

前橋の強い風は私にとって非日常でした。帰り道の間に髪が大変なことになりました。それでも昨日よりは全然マシです、とカフェのオーナーさんが言ってました。前日は柳の枝が全部真横に流れていたそうです。取り壊し中のビルの前を通るときはドキドキして早足になりました。
まだ一度しか行ってないけれど、私にとっての前橋は、風が強く、道は広く、大きな木が並び、腰掛ける場所がたくさんあり、綺麗な水が流れ、文学館があり、それらすべてをひっそりと誇るような街に見えました。また機会があったら行きたいなと思います!

 

最後になりましたが、川口晴美さん、企画運営してくださった学芸員とスタッフの方々、出演者の皆さん、とても素敵な時間を過ごさせていただきました。

ありがとうございます!!!

図録も買ってよかったです!!!

 

図録/チケット/イベントパンフレット

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