2022年12月に読んだ本
イザベラ・ディオニシオ『イタリア人が偏愛する日本近現代文学』
現代から、そして女性から見たツッコミ視点がメインなのだけど、とても面白く愛情深く紹介されていて、名前しか知らなかった名作たちを読みたくなる。全体としてとても良い近代文学ガイドだなと思いました!まあそれでも『蒲団』は相当キモいな…と思ったけど あと夏目漱石『こころ』は各国で翻訳されているけど「お嬢さん」「先生」は言葉の持つニュアンスの置き換えが難しく、「ojosan」「sensei」とそのままローマ字表記でなんとなく通じている、という翻訳のお話なんかもごく面白かった。
先月からちょびちょび太宰の短編読み進めてるけどほんとどれも面白いし読みやすいな〜。 『女を書けない〜』でもピックアップされてるけど本作中の妻さっちゃんは確かによくわからない。世間知らずと世間ずれが同居してる感じ。夫が代金を踏み倒してる飲み屋に働きに行くのに〈あすまた、あのお店へ行けば、夫に逢えるかも知れない。〉と言ってたのがちょっと八百屋お七を連想したけど、でもそこまで執着してる感じもないのよね。
千葉一幹『現代文学は「震災の傷」を癒せるか 3•11の衝撃とメランコリー』
そういえば震災文学あんまり読んでないなぁということに気付いた。震災の経験を言語化することへのためらい、物語の欺瞞に向き合うことについてなど。とくに第一章が面白かった。
『現代文学は〜』でも取り上げられていた『恋する原発』『神様2011』『馬たちよ、それでも光は無垢で』など震災文学についても詳しい。
文月悠光『洗礼ダイアリー』
布団のドームの中で本を読んでいた子供の頃のエピソードの、その文章が好き。こちらはエッセイだけど次は詩集読みたい!
盛可以『子宮』(訳/河村昌子)
家父長制の強い国における妊娠は政治問題。特に中国の一人っ子政策はまるで子宮の管理そのもののよう。本書はそのルール下で生きる、ある家族の三世代の女性たちの様々な人生を描いた大河小説。ドキュメンタリー映画『一人っ子の国』で見せられたことを思えば、すごくマイルドに描かれているように思うんだけど、国内で出版する以上色々あるんだろうなと思う…。今年は中国の小説を2冊読んだな。